彼のオートバイ(カワサキ 650RS W3)、彼女の島

片岡義男さんの小説「彼のオートバイ、彼女の島」(昭和59年発行の角川文庫)を読みました。

彼のオートバイはカワサキの650RS W3です。これはW1の後継機で、Z2系のフロントフォークを採用し、Fブレーキをダブルディスク化するなどして1973年に発売されました。

彼女はヤマハのRD250に乗っていました。彼の友人が乗るホンダCB400FOUR-IIなども登場します。

彼のオートバイ、彼女の島 文庫本

彼はW3を溺愛している。直立2気筒のエンジンを心から愛し、股ぐらの下にあるふたつのシリンダーの中で、混合気の燃焼がくりかえされている事に、エンジンがいま生きて動いていると感動して涙するほどです。エンジンが生き物のように感じられる、というのは私も分かる気がします。

ストーリーは彼のオートバイライフが綴られているだけで特にどうという内容はなく、最後に何か驚きの展開を見せるといったこともありませんでした。ツーリングに出かけたり、転倒したり、白バイや4輪車と揉めあったりするなど、ライダーなら有りがちな事です。

ただ、オートバイで走っている時の感覚の表現は、かなり独特のように思いました。例えば、「冬のオートバイは枯葉とのおっかけっこだ」で始まる部分。私はこのようなことは思ったことありませんし、落ち葉は濡れていると危険なので嫌いです。

高速道路を走る部分は文章描写が良く書かれています。が、バイクに乗ったことがない人だと分りづらいかもしれない。

あと、高速走行中のライダーは、走り始めは風圧や風切音に圧倒されそうになるが、それに体が慣れてくるとバイクと一体となって、究極的には翼を得て飛翔感に包まれるようになると言う。

いわゆるライダーズハイだと思いますが、残念ながら私は、この路面から離陸するような錯覚には陥ったことは無いです。

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